院長コラム
2024年 秋
2024年10月 くまもと心療病院 理事長・院長 荒木 邦生
2024年の夏はつらかった。あんなに暑い夏が長く続くなんて。高齢化した体力と気力では、乗り切れるかどうか心配だった。しかし10月に入っても、まだ気持ちの良い季節というにはほど遠い。今のところ安定した天気と澄み切った青空が待ち遠しい秋である。
ところで、正月に大きな地震があった能登地方に、今度は大雨が降り被害がより一層拡大した。ニュースを見ていると、元々人口減少と過疎化で悩んでいた地方が、大きな災害が重なり、地域そのものが消滅する危機にさらされている。思い起こせば、東日本大震災で地震と放射能で消滅した地域はいまだ復活できていない。災害対策がこれからの日本の大きな課題となることは間違いない。
病院は人手不足に悩んでいる。退職者がこれ以上でると、基準を割り込んでしまう可能性があるため、60床ある西2階病棟を当面50床で運用することになった。元々当院は322床だったが新築後に282床になり、この10月からは272床の運用になる。むかし増床を繰り返して大きな病院に成長させた亡き父が知ったら怒り心頭だろう。今後も精神科病院は低い診療報酬と病床利用率の低下、人手不足に悩まされるだろう。とくに医療や福祉は人こそが大事である。いくらIT化をすすめても、人が居なければ成り立たない業種である。これまでもそうであったが、これからはますます良い人材がどれくらい病院にいるか、そのことこそが病院の財産となるのだろう。
ところで、衆議院の解散と総選挙が行われる。石破内閣が発足したばかりですぐに解散というのは、私には意味が解らない。何もしていないのに国民の評価を問うというのは、いったい何をどう評価すればよいのか。早期解散には不満があるが、石破総理は私と同じ年であり同情も感じている。70歳を目の前にして日本国を背負う重責を果たすことはさぞかし大変だろう。仲間が少ないと潰されてしまう。これからは担ぎ手の仲間を増やして重い荷物を持ち上げてほしい。私も良き人材と良き仲間を増やして難局を乗り越えたいと思っている。
院外広報誌「りふれ」Vol.80
秋号 より