【2024年4月】2024年変化の春
2024年変化の春
2024年4月 くまもと心療病院 理事長・院長 荒木 邦生
院長室の窓から見える桜の木も、だいぶ花が散って葉桜になった。このところかなり雨が降ったこともあって、桜を見る時は短いとあらためて思った。お花見を計画しても、ちょうどその時満開にならないのが、桜の難しさだ。人生の満開が知らぬ間に通り過ぎるように。
日本人は桜にいろんな思いを寄せて眺める。3年前に新棟が出来上がった年に、まだ引っ越し前の建物の5階のテラスまで、桜の花びらが風で舞い上がって来たことを思い出す。これは新棟の完成を祝ってくれていると思って感動した。
2024年は心理的にコロナを脱して、病院の行事を通常に戻したい。また流行した時はその時考えるとして、とにかくいったんは心理的な束縛から解放されたい。ただ感染症の影響だけでなく様々の環境変化があったので、全く同じようにできるかは検討が必要だ。まず病棟新築による場所の変化、入院患者の高齢化、職員不足など様々な要因がある。夏祭りや文化祭のあの賑わいをもう一度、という気持ちもあるが、同じことを同じように続けるのは伝統芸能である。担い手がいなければ、また喜ぶ観客がいなければ伝統芸能も終わる。今いる人たちに誰が何をすることができるのか?が問われるべきである。
熊本も変化を迎えている。TSMCが完成しその周辺は人も増えて賑わっている。外国人の方も大勢見かけるようになった。病院があり患者さんや職員が多く生活している宇土市周辺も変わるべきである。すでに菊陽町や大津町はバブルになり、土地の値段は高騰して渋滞もひどいと聞いている。熊本市中心部から比較的近くて、アクセスの良い宇土市周辺は若い世帯の居住地として適していると私は思う。色々問題はあるかも知れないが宅地整備など条件が整えば、住みやすくて便利なはずである。
医療は伝統芸能でも世襲でもない。環境が大きく変わっている現在においては、組織や人も変わるべきである。大事なことは本当に残すべきものは何か、変えるべきものは何かを見分けることだと思う。
院外広報誌「りふれ」Vol.78
春号 より