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【2025年7月】2025年 夏


2025年 夏

2025年7月 くまもと心療病院 理事長・院長 荒木 邦生

 

 まだクマゼミも鳴いていないのに、なんと早い梅雨明けだろう。この暑さがあと2か月続いたら身体が持たないと思う。小学生の夏休みに、気温30度超えで「暑い」と言いながら、扇風機の前でカルピスを飲んでいた頃が懐かしい。最近は35度超えで「苦しい」と言いながら、エアコンの効いた室内から出られないのが現状である。「うちは扇風機しかありません」という患者さんが何人かいたので、避難的入院を勧めてみたが「慣れています」と断られた。貧困や高齢の方々にとっては危険な季節である。

 

 鹿児島県のトカラ列島では地震が続いている。我々はどうしても9年前の熊本地震を思い出してしまう、強烈な本震のあと震度3とか4の余震がずっと続いて、いつになったら鎮まるのだろうと不安な毎日だったことを。島々の住民の方はさぞかしつらいだろう。何とか少しでも早く落ち着いた生活を取り戻してもらいたい。

 

 病院は相変わらずの人手不足で職員に負担をかけている。しかし病床利用率を上げないと経営は苦しくなる。業界全体の悩みではあるが、国はこれからの医療についてどう考えているのだろう。苦しそうだから少しだけ診療報酬を上げてやろう的な考えなら、これから倒れる病院が増えるだろう。来る参議院選挙の応援で県内の病院を回った時も、すべての病院のために診療報酬アップを訴えた。もし来年の改定で大幅アップが叶わなければ、病院団体による政党支援の考え方そのものを変える必要性がある。

 

 人手不足は「地域に開かれた病院」という当院の理念も脅かしている。年間行事だった夏祭りは職員への負担が大きいためできない。何十年と続いた伝統が途絶える可能性がある。しかし地域に開かれた病院であり、地域のために貢献し続ける、という基本理念の砦は崩せないと思っている。ただし今は理念を心に秘めつつ、このきびしい時代をとにかく乗り切ることを優先せざるを得ない。

 

 

院外広報誌「りふれ」Vol.83

 夏号 より

 


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