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【2023年7月】またもや厳しい夏に


またもや厳しい夏に

 

2023年7月 くまもと心療病院 理事長・院長 荒木 邦生

 

 集中豪雨の季節になった。近年の梅雨は、しとしと長雨というものとは違いとにかく激しい。数時間であっという間に川が氾濫するため、準備や避難が間に合わない。土砂災害も含め患者さんや職員の自宅に影響がないか心配する。


 3月以後落ち着いていた新型コロナウィルス感染症が、じわじわと増えている。昨年夏の大流行を思い出して不安になる。これ以上患者さんや職員に負担をかけたくない。感染力と毒性が弱まっていることを祈るばかりである。


 ウクライナの戦争はいつまで続くのか終わりが見えない。いつか核兵器が使用されるのではないかという不安が拭えない。日本の政治は相変わらず選挙だけを見ている。恐らく秋の解散総選挙後に、子育て支援以外の社会保障費をカットする政策を打ち出すだろう。高齢者を含む弱者が安心して共に生きられる社会の実現は遠い。


 精神科医療においては虐待問題が注目を浴びている。悪いことは正さなければならない。しかしなぜそのようなことが起きてしまうのか?を考えなければ良い方向に向かわない。個人と組織が虐待について「真剣に考える」ことが最も重要と思う。思考回避が最も重い罪である。


 街は賑わいを回復しつつあるが、世の中を抑鬱が覆っている。若者が生きがいを見つけにくい社会である。「希望がない」と思い込んでいる青年が経済的に追い込まれ、助けも求められなくては自暴自棄になるしかない。精神科医療に携わる私たちはいま頑張らなくてはならないが、コロナ禍でまだ我々にはその体力と気力が無い。


 何とか良いニュースをと考えるがあまり思い出せない。そんななか私が当院で勤務を始めて30年になった。いつも永年勤続功労者を表彰している立場であるが、表彰されて嬉しくもあり恥ずかしくもあった。高齢者の仲間入りもしたし、いまは「守り重視」で良いと思っている。消極性は先代から叱られそうだが、今は感染症と猛暑の夏を乗り切るだけで精一杯なのである。

 

 

 

院外広報誌「りふれ」Vol.75

 夏号 より

 


 

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