【2025年4月】2025年 春
2025年 春
2025年4月 くまもと心療病院 理事長・院長 荒木 邦生
今年の冬は寒くて長かったような気がした。ところが平均気温はむしろ暖かく暖冬の部類だったようだ。歳のせいで環境への適応能力が低下しているのは間違いない。
何でも歳のせいにしてしまうのは問題だが、アメリカのトランプ大統領の存在は老害と言える。古い価値観しか持ち合わせておらず、あまりにも傲慢で高圧的な手法で、自分の支持者向けの政治をしている。不動産の取引(ディール)と、国と国との関係を一緒にしないでほしい。しなくて良い戦争をしかけて負けた日本が、勝った国に従うことは、ある程度は仕方ないものの、トランプ氏は信用できないし好きになれない。日本は近隣諸国と独自の安全保障体制をつくって、アメリカ依存から脱しなければならない。少年時代に、アメリカのテレビドラマを観て、アメリカの音楽を聴いて、抱いていた豊かで強くて寛容なアメリカへの憧れはもう無い。そこにあるのは自己顕示欲の強い年老いたリーダーが「アメリカを再び偉大な国にする」と叫びながら、選挙に勝つことだけを目標に政治をする姿である。
病院の方は、病床利用率の低下と人手不足の問題を、何とか少しでも改善して病院経営を安定化させたい。そのためには私自身も入院外来とも診療で頑張らねばならないが、心身のケアもしながらなので、どこまで頑張れるか不安もある。父が亡くなった年齢にあと12年と迫ってきている。臨床医としての賞味期限はすでに過ぎ、消費期限も迫ってきている中で、残りの時間を自院と地域密着の仕事に専念したい気持ちが強いが、すんなりとはいかないかも知れない。
今年はお花見をすることができなかった。毎年桜の木の下でお弁当を食べて、少しだけ飲んで季節をしみじみと楽しんでいたが、タイミングが合わず雨の中孫たちと食事に行った。もっと暖かくなったらみんなでバーベキューでもできれば良いと思っている。そのように1年1年の季節を脳に刻み込むことを意識するこの春である。
院外広報誌「りふれ」Vol.82
春号 より